WATERMAN’S PRESS

ウインドサーファーに求められる「ウォーターマン」としての自覚
※WATERMAN’S PRESS COLUMN 001から引用


「ウォーターマン」という言葉は、巨大な波に果敢に挑もうとするサーファーや勇敢なライフセーバーを指して使われることが多い。しかし、それは間違ってはいないが、正しいとも言い難い。

「真のウォーターマン」として語り継がれる人物に、エディ・アイカウというハワイアンがいる。彼は1960 年代後半に、ワイメアベイの12 メートルもの大波を克服した唯一のビッグウェーバーであり、数えきれないほど多くの命を救った伝説のライフガードでもある。その彼が誰からも「真のウォーターマン」と認められるようになったのは、彼が「ホクレア」のクルーになってからのことだ。

「ホクレア」は、「スターナビゲーション」と呼ばれる、星の位置や潮の流れ、風の向きといった自然の情報だけを手がかりに海を渡る、ハワイの伝統的な航海術を探求するカヌーのことだ。1978 年、エディが乗船していたホクレアは、悪天候に見舞われ、沈没の危機に瀕してしまう。その時、彼は近くの島に救援を求めるべく、迷うことなくサーフボードを抱えて海に飛び込んだという。

その挑戦は、しかし失敗に終わり、彼は帰らぬ人となった。転覆したホクレアに掴まり、夜通し漂流していたクルーたちは、翌日幸運にも救助されて命を落とすことはなかったが、彼らは、自分たちが助かったのは、エディのウォーターマン・スピリットが起こした奇跡だと信じて疑わない。

31年という短い生涯ではあったが、いつだってエディは海とともに生きた。海に学び、海と遊び、時には海と喧嘩することもあった。エディにとって海はかけがえのない教師であり、親友だった。そんな彼に憧れるウインドサーファーは少なくない。なぜならウインドサーフィンとは、海という自然への理解、海との対話が求められるスポーツであり、ウインドサーファーとはそれを実践する「ウォーターマン」にほかならないからだ。

「ウォーターマン」の名を冠したオンラインマガジン「WATERMAN’S PRESS」では、ウインドサーファーだけでなく、様々な分野で海の環境改善のために活動する人々とも「ウォーターマン・スピリット」を共有し、微力ながらも彼らの活動をサポートしたい、と考えている。海水の酸性化、海中のマイクロプラスチック、沿岸海域の磯焼け……今、私たちの海は待ったなしの危機に瀕している。そんな海の窮状に目を向け、私たちは「ウォータマン」としての自覚を持って行動を起こさなければならない……そんな思いが「WATERMAN’S PRESS」の創刊を促した。

「Eddie Would Go! 」(エディなら行くぜ!)。

ハワイの人々は困難な状況に立ち向かう時、この言葉を思い出して勇気を振り絞るという。
WATERMAN’S PRESS」もこの言葉を胸に、私たちの海の未来のためにメッセージを発信し続けていきたい。

 

TOP